
室内のチェックポイント
内見ではまず室内全体の状態をくまなく確認しましょう。内装の傷みや設備の不具合は、後で大きな手直し費用につながります。
例えば床や壁のキズ・汚れの有無、天井のシミなどは内覧時に要チェック項目です。フローリングに大きな傷がないか、壁紙が剥がれていたり浮いたりしていないか、部屋全体に水漏れの跡がないかなどを目で追います。
また、換気扇・エアコン・給湯器などの可動確認も重要です。10年を超えた設備は経年劣化で故障しやすいため、例えば給湯器の交換時期を確認しておくと安心です。その場で実際に水を流したり電源を入れたりして機器が正常に動くかどうか確かめましょう。
窓・建具の確認
窓ガラスに割れや欠けがないか、開閉に重さやガタつきがないか確認しましょう。
隙間風が入っていれば気密性の低下や冬場の寒さの原因になりますし、防音性能もチェックしたいポイントです。
賃貸の事例ですが、窓周りの防音性不足から足音や隣室の声が気になるケースがあります。住居の場合も、周囲の騒音に敏感な人は天井や壁の厚み、遮音材の有無も意識しましょう。
水回りのチェック
水回り(キッチン・バス・トイレ・洗面所)は特に劣化が起こりやすい場所です。床や壁にカビ・シミがないか、床板がブカブカ浮いていないか、排水トラップに汚れが溜まっていないかなどを確認し、水漏れのサインがないか見逃さないようにしましょう。
特にバスルームでは換気扇の有無が重要です。換気設備がないと湿気でカビが生えやすく、実際に「浴室に換気扇がなく湿気でカビがひどい」という失敗例もあります。
暗い日は日中でも照明が必要になるケースもあるため、日当たりと照明位置・コンセント配置もチェックしておきましょう。
配線・収納・家具配置
配線・コンセントの配置や家具配置イメージも確認しておきましょう。
照明やエアコンの位置が希望に合っているか、家具・家電を置いても動線がスムーズかなど、実際の生活を想像してみてください。
また、収納スペースは後から増やしにくい部分です。クローゼットや物入れが十分か、建具がしっかり閉まるか、扉を開けるスペースが確保できるかなども意外と見落としがちなポイントです。
インターネット・ガス・その他
インターネット回線やテレビ端子の有無も重要です。売買契約を行った後で、「インターネット回線が通っていなかった」「契約手続きが煩雑だった」とならないよう事前に配線状況を確認し、必要なネット環境が整っているかチェックしましょう。
コンロの口数も意外に盲点です。自炊派なら「コンロは2口以上が良い」という意見もあるので、ガスの種類(都市ガスかプロパンか)も含めて確認すると、将来の光熱費の目安にもなります。
建物外部のチェックポイント
建物外部は、構造的な安全性や将来のメンテナンス費用に直結する部分です。屋根・外壁・基礎にひび割れや腐食がないかを必ず目視しましょう。
外壁や基礎に幅0.5mm以上・長さ1m以上の亀裂があると、中の鉄筋や木材が腐食する原因になります。雨漏りやシロアリのリスクを避けるためにも、屋根の雨どいや軒下、バルコニー防水層に破損がないかも確認してください。
中古住宅で天井に染みがあった例では、のちに雨漏りからシロアリ被害が発覚し大きな修理費を強いられたというケースも報告されています。シロアリは湿気を好むため、雨漏り・漏水が疑われる箇所は特に念入りにチェックしましょう。
外観・共用部・管理体制
外観の汚れ・劣化も見逃せません。外壁の色あせ・藻類の付着、タイルの剥離、コーキングの傷みなどは、将来的な補修費用がかさむサインです。
また、雨どいの詰まりや歪みは台風時の雨漏れにつながるので、落ち葉などで目詰まりしていないか確認しましょう。戸建てなら庭木が壁に接触していないか、門扉・フェンスのガタつきがないかもチェック対象です。
マンションの場合は共用部・管理体制を重視しましょう。エントランスや廊下、エレベーター、駐輪場などが清潔かどうかは管理状況のバロメーターです。「マンションは管理を買え」と言われるように、共用部分に落書きやゴミが放置されているような物件はリスクが高いといえます。
防犯・耐震設備
防犯・耐震設備も見落としがちですが重要です。集合住宅ならオートロックや防犯カメラ、宅配ボックスの有無をチェックし、戸建てなら防犯センサーや門灯の設置状況を確認しておきましょう。
また、「新耐震基準」(1981年以降)適合物件かどうかは最低限確認すべき点です。古い木造住宅の場合は特に梁の歪みや土台の沈みを確認し、地震の際に建物がどれだけ揺れるかを専門家に尋ねると安心です。
周辺環境のチェックポイント
交通利便・日照・眺望
物件周辺の環境は、実際に暮らしてからの快適さや安全を左右します。交通利便では、最寄駅・バス停までの所要時間やバスの本数を実際に歩いて確認しましょう。交通機関の利便性だけでなく、通勤・通学ルートの混雑状況も重要です。通勤時間帯に現地を訪れ、道路の渋滞や駅ホームの混雑具合を見るとイメージが湧きます。
日照・眺望の確認も欠かせません。南向きや角部屋は日当たりに優れますが、周囲の建物によっては日光が遮られることがあります。実際、「購入時は南側に空き地があって日差しがよかったが、数年後に高層マンションが建ち日照がほぼなくなった」という事例もあります。区役所などで用途地域(商業地域・準工業地域など)を確認すると、その場所に将来何が建つか予測ができます。
生活施設・治安・将来計画
生活施設・治安については、昼間だけでなく夜間も歩いてみると良いでしょう。近隣にスーパーやコンビニ、病院、学校、公園が揃っているか、特に深夜営業の店があるかは利便性に直結します。「夜遅くまで営業しているスーパーがあるか調べておくべきだった」という意見もあります。
また、飲食店や工場の臭い・排気ガスが室内に入ってこないか、また近所で頻発する騒音(電車の音、工事の音)にも注意しましょう。物件によっては「昼間は問題なくても夜になると近くの飲食店から臭いが入ってきた」「近隣トラブル情報をもっとチェックすればよかった」といった事例も報告されています。警察や自治体のサイトで犯罪発生件数を調べたり、地域住民の声を聞いたりして治安を把握しておくと安心です。
周辺の将来計画も確認しておきたいポイントです。目の前が空き地でも、将来的に高層ビルが建つ計画があるかもしれません。開発情報や都市計画図で建築制限を確認し、日照や眺望が将来も維持されるかを予想しましょう。また、最近はテレワーク普及で居住エリアの選択基準も変わりつつあります。今後も自宅近くでの勤務が続くかどうかも含め、通勤時間だけでなくライフスタイルの変化も考慮してください。
その他の注意点
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設備・リフォーム履歴
設備・リフォーム履歴について売主や仲介業者に必ず質問します。交換した給湯器やクロス張替えの時期、過去の水漏れやシロアリ被害の有無などを聞き、図面や請求書で裏付けられると安心です。売却理由も確認し、たとえば居住者の転勤であれば問題ありませんが、「近隣施設に不満があって売却」という理由なら注意が必要です。
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法令・契約関係
法令・契約関係では、「耐震基準適合証明書」や「既存住宅売買瑕疵保険」の有無も確認しておくとよいでしょう。特に中古住宅では瑕疵保険に加入していれば、購入後に欠陥が見つかっても補修費用を保険でカバーできます。また、住宅ローン減税の条件や固定資産税の減額措置なども事前に調べ、資金計画を立てておきましょう。購入時には物件価格の他に諸費用(仲介手数料や登記費用など)が3~8%程度必要になることも忘れずに。
諸費用については、不動産購入の諸費用はいくらかかる?をご確認ください。 -
専門家の目を借りる
専門家の目を借りることも検討しましょう。特に築年数が経った物件では、建物診断士(ホームインスペクター)によるインスペクションを受けると安心です。プロに依頼すれば、目視だけでは見つけにくい隠れた問題点まで詳しくチェックしてもらえます。内見時には自分のチェックリストと併せて、後で改めて図面や写真を見返せるようスマートフォンで撮影・計測しておくと、購入後のミスマッチを減らせます。
まとめ
内見はその物件が「理想に近いか」を見極める最大のチャンスです。第一印象に左右されすぎず、上記のポイントをしっかり確認しながら、細部にわたってチェックしましょう。
チェックリストに頼りすぎるのではなく、なぜその箇所を見るのかを理解し、売主や担当者にも積極的に質問することが大切です。
事前に疑問点を整理しておけば、同じ物件を複数回訪れても新たな発見があるかもしれません。この記事で挙げた具体例や失敗談も参考に、見落としがちなポイントにも目を配り、後悔しない物件選びに役立ててください。