「利回り8%」——不動産投資の広告でよく目にする数字です。ところが実際に収支を計算すると、手元にほとんどお金が残りません。そんな違和感はないでしょうか。
その正体が、表面利回りと実質利回りの差です。広告の利回りは、経費を差し引く前の「表面利回り」で書かれています。
本記事では、ワンルームマンション投資を検討し始めた方に向けて、2つの計算式の違いと物件選びの注意点を整理します。
表面利回りとは?広告の数字の正体
表面利回り(グロス利回り)は、年間家賃収入を物件価格で割った、もっとも単純な利回りです。
表面利回り(%)= 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
物件価格2,000万円で家賃が月8万円(年間96万円)なら、96万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 4.8%です。価格と家賃だけで計算でき、物件の比較には向きますが、保有中の経費も購入時の費用も含まれない理想状態の数字です。
実質利回りとは?差はどこで生まれるのか
実質利回り(ネット利回り)は、家賃収入から経費を引き、物件価格に購入時諸費用を加えて計算します。
実質利回り(%)=(年間家賃収入 − 年間経費)÷(物件価格 + 購入時諸費用)× 100
実質利回りは必ず表面利回りを下回ります。差を生む要因は主に5つです。
- 管理費・修繕積立金 — 毎月固定で発生し、値上げもあり得ます。
- 固定資産税などの税負担 — 毎年1月1日時点の所有者には、原則として、その年度の固定資産税が課され、物件の所在区域や自治体の条例によっては都市計画税も課されます。
- 空室リスク — ワンルームは入居者が1世帯のみのため、空室になると家賃収入がゼロになります。
- 金利上昇 — 変動金利では返済額が増え、手残りが減ります。
- 購入時諸費用 — 仲介手数料や登記費用が初年度にかかります。
シミュレーション例:物件価格2,000万円・年間家賃収入96万円のケース
仮の数値を使ったシミュレーション例で、2つの利回りがどれくらい離れるかを見ていきます。以下はあくまで一般的な目安として置いたモデルケースです。
| 項目 | 金額(年間) |
|---|---|
| 物件価格 | 2,000万円 |
| 家賃収入(月8万円) | 96万円 |
| 管理費・修繕積立金 | ▲18万円 |
| 賃貸管理委託手数料 | ▲5万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | ▲7万円 |
| 火災保険料・原状回復積立など | ▲2万円 |
| 年間経費 合計 | 32万円 |
| 購入時諸費用 | 140万円 |
- 表面利回り:96万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 約4.8%
- 実質利回り:(96万円 − 32万円)÷(2,000万円 + 140万円)× 100 = 約3.0%
同じ物件でも、4.8%と3.0%では見え方がまったく違います。さらに年間1か月分の空室が出て家賃収入が88万円になると、実質利回りは約2.6%まで下がります。ここに借入の返済が加わることを考えれば、表面利回りだけで判断するのが危険だと分かります。
上記の数値はすべて仮の条件を置いたシミュレーション例で、特定の利回りや収益を保証するものではありません。実際の判断では、物件ごとの管理費・修繕積立金の実額、固定資産税・都市計画税の課税有無・税額、想定家賃の妥当性を個別に確認してください。
実質利回りを見るときの4つの注意点
実質利回りを計算できるようになっても、その数字を過信すると別の落とし穴があります。購入前に確認したい観点を4つ挙げます。
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新築プレミアムと資産価値の下落
新築ワンルームは広告費や販売経費が価格に含まれるため、中古市場の水準より高くなりやすいと言われます。この上乗せ分は入居者が入れ替わると剥がれていきます。想定家賃が「新築時だけの家賃」でないか、周辺の中古物件の募集家賃と比べて確認しましょう。売却時に価格が下がっていれば、保有中の家賃収入で積み上げた利益が目減りする点も見落とせません。
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変動金利が上昇したときの試算
実質利回りの計算式に返済は含まれないため、金利が上がっても実質利回り自体は変わりません。しかし手残りは確実に減ります。変動金利で借りるなら、金利が1%・2%上がった場合の返済額を事前に試算し、それでも耐えられる借入額に抑えておくことが重要です。
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エリアの空室率と入居需要
空室でも管理費・修繕積立金や税金は出ていきます。想定利回りが満室前提で計算されていないかを確認し、年1〜2か月の空室を織り込んでも成り立つか検証してください。駅からの距離、単身者向けの供給量、競合物件の募集条件が需要を左右します。賃貸ポータルで同じエリア・同じ間取りの募集件数と募集期間を見ると実態が掴めます。
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出口戦略——売りやすい物件かどうか
投資の最終的な損益は、保有中の家賃収入と売却価格の合計で決まります。売却のしやすさを左右するのは、立地、建物の管理状態、修繕積立金の積立状況、担保評価が付きやすい構造・築年数などです。なお売却によって譲渡所得が生じた場合は、課税対象となることがあります。具体的な税率や控除の適用可否は税理士や所轄の税務署にご確認ください。
まとめ
表面利回りは物件を絞り込むための入口の数字、実質利回りは管理費・修繕積立金、税負担、空室リスク、購入時諸費用まで反映した実際の収益力に近い数字です。今回のモデルケースでは、表面利回り約4.8%の物件が実質利回り約3.0%になり、1か月の空室を想定すると約2.6%まで下がりました。
大切なのは、広告の利回りをそのまま受け取らず、自分で経費を差し引いて計算し直す習慣を持つことです。そのうえで新築プレミアム、金利上昇、空室率、出口戦略の4点を検証すれば、初心者でも判断の精度は大きく上がります。前提が読み取れない物件は、遠慮せず販売会社に内訳を求めましょう。
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本記事の数値はシミュレーション例であり、特定の投資成果を保証するものではありません。
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