不動産を売ろうか迷って一括査定に入力すると、しばらくして電話が鳴りはじめ、数日のうちに数社から査定額が届きます。着信が続いて、出るのがおっくうになっている方もいるでしょう。並んだ数字を前に、どれを信じればいいのか、すぐには決められない方も多いはずです。この記事は、入力ボタンを押す前の方にも、すでに電話や査定額が届いている方にも、少し立ち止まって考えるための材料をまとめたものです。
この記事は、売却仲介の現場で一括査定からの依頼に対応している担当者の経験をもとに書いています。文中の「多い」「大半」「ほとんど」といった傾向は、集計したデータではなく現場での体感です。また、見ているのは売却の仲介という範囲に限られ、不動産業界全体の割合を示すものではありません。
この記事でわかること
- 1社だけ高い査定額が出たときの考え方 — その数字が何を表しているのか
- 仲介査定と買取査定の違い — 同じ「査定額」でも意味が違う理由
- 高い査定額を信じて任せたあとに起きやすいこと — 内見が入らない、値下げが続く流れ
- 電話やメールが止まらない仕組み — 依頼が届いた瞬間に何が起きているか
- 使う前に決めておきたいこと、数字が並んだら見るところ — 会社と担当者を選ぶためのチェックリスト
並んだ金額のうち、1社だけ飛び抜けて高いとき
一括査定では、物件の情報を一度入力すると、複数の不動産会社から査定額が届きます。数字が並ぶと、その中に1社だけ、明らかに高い金額が混じっていることがあります。
このとき、最初の判断が「どの会社がいちばん高いか」になりやすいのは自然なことです。売る側としては少しでも高く売りたいですし、その会社が名前を聞いたことのある会社なら、「有名な会社が言うのだから、この金額で売れるのだろう」と受け取る方も多いと思います。
ただ、会社を選ぶ前に確かめておきたいことがあります。その金額が、そもそも何を表している数字なのか、です。
その金額は「売れる価格」ではない
一括査定で届く金額の多くは、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」で売ることを前提にした査定額です。仲介査定は「仲介で売りに出した場合、このくらいの価格帯で売れる可能性がある」という相場の見立てであり、その価格で売れることを約束するものではありません。実際に売りに出す価格(売り出し価格)は、査定額を参考に売主が決めます。実際に売買が決まった価格(成約価格)は、そこから買主との交渉を経て決まります。
これとは別に、買取査定があります。買取は、不動産会社が自社で物件を買い取る方法です。会社自身が買主になるので、提示された金額で売れることがはっきりする一方、一般に仲介で売る場合より価格は低くなる傾向があります。どちらも「査定額」と呼ばれますが、意味はまったく違います。並んだ数字を比べるときは、まずそれが仲介の査定なのか、買取の査定なのかを確かめてください。
もう一つ知っておきたいのが、仲介会社の立場です。仲介会社が受け取るのは、売買が成立したときの仲介手数料(売買を成立させた報酬)です。手数料には、成約した物件価格などを基礎とする法律上の上限があり、実際の額はその範囲内で、媒介契約を結ぶときに決めます。売れる価格が査定額より下がると、売主の手取りは大きく変わりますが、手数料の変わり幅は小さくなります。また、買取のように、仲介会社が自分でその価格で買う責任を負うわけではありません。
これは仲介という仕組みの性質で、仲介会社が無責任だという話ではありません。仲介と買取の違いは、不動産の売却方法の比較で詳しく解説しています。
なぜ高い数字のほうが選ばれやすいのか
査定額を出す側から見ると、出し方には大きく二つの方向があります。一つは、近くで実際に売れた事例(成約事例)や売り出し中の物件を調べ、根拠を示して「このあたりが現実的です」と伝える出し方。もう一つは、相場に少し色をつけて、高めの数字を出す出し方です。
並べて見たとき、売主の目に留まりやすいのは後者です。査定額を受け取った時点では、その数字が本当に売れる価格かどうかを確かめる手段がほとんどありません。確かめられないまま比べれば、高いほうに気持ちが向くのは当然です。そして、高い数字を出した会社ほど、次の面談につながりやすくなります。
これは特定の会社がどうという話ではなく、複数の数字を同時に並べて比べる仕組みのなかで起きやすいことです。現場の担当者の実感としても、根拠を添えて現実的な価格を伝えた査定は、高い数字の横に並ぶと見向きされにくいと感じる場面が少なくありません。
高い数字が出ること自体が問題なのではありません。大事なのは、その数字に根拠があるか、そして売れなかったときの話が最初からできているかです。確認のしかたは、後の章でチェックリストにまとめます。
高い額を信じて任せたあとに起きやすいこと
名前を知っている会社が、高い金額を出してくれました。それならと、その会社に売却を任せ、高めの価格で売り出します。ここまでは、よくある流れです。
ところが売り出してみると、内見(買主が実際に物件を見にくること)がほとんど入らないまま、何週間、何か月と過ぎていくことがあります。買主は、同じエリアで売りに出ている似た物件と見比べて内見先を選びます。売り出し価格が市場と合っていなければ、そもそも比較の候補に入りにくく、内見の申し込みも入りにくくなります。
問い合わせがないまま時間が経つと、値下げを考えることになります。一度では済まず、何度か下げてようやく問い合わせが入りはじめます。最終的には、当初の強気な売り出し価格から、おおよそ3割ほど下がったところで売買契約になります。現場では、こうした経過をたどるケースを頻繁に目にします。
影響が大きいのは、買い替えを前提にしていた方です。最初の査定額をもとに次の住まいの予算や住宅ローンを考えていると、売却価格が下がった分だけ資金計画が狂います。売却の時期がずれ込めば、仮住まいの費用や、新居と今の家のローンが重なる期間の心配が出てくることもあります。
高い価格で売り出すこと自体が問題なのではありません。問題になりやすいのは、「この価格で売れる」と思い込んだまま、売れなかったときにいつ・どのくらい価格を見直すかを決めずに始めてしまうことです。
なぜ電話やメールが止まらないのか
一括査定に入力すると、短い時間のうちに複数の会社から電話、SMS、メールが届きます。驚いたり、少し怖くなったりする方もいるでしょう。これには仕組みのうえでの理由があります。
一括査定サイトの多くは、問い合わせ1件ごとに、不動産会社の側に費用が発生する仕組みになっています。金額はサイトや契約の内容によって変わりますが、会社にとっては、依頼が届いた時点ですでに費用がかかっている、ということです。
その費用を回収したい会社ほど、早く連絡を取ろうとします。同じ依頼が複数の会社に同時に届いているので、最初に話ができた会社が有利になりやすいからです。こうして、入力の直後に電話・SMS・メールが集中します。
一方で、依頼する側の事情もさまざまです。現場の体感では、まだ売るつもりはなく「いくらで売れるのか知りたいだけ」という方が大半で、金額がわかった時点でやり取りを終える方がほとんどです。届いた連絡のすべてに丁寧に応じるのは、誰にとっても大変なことです。そのことを責めるつもりはありません。数社から一斉に連絡が来れば、全部に応じるのが難しいのは当然です。
連絡先が届かなかった例
現場であった一例です。ある日の朝、一括査定から依頼が届きました。担当者が登録されたメールアドレスにメールを送ると、宛先に届かず戻ってきました。電話もかけ、あわせてSMSでも、本人確認のためにお名前を返信していただけないかとお願いしました。
返ってきたのは、「もういいです。これ以上のメールは遠慮しときます」という一文でした。担当者は、一括査定サイトから届いている送信完了メールから査定のキャンセル手続きができることをお伝えし、それ以降の連絡を止めました。
このように、連絡先が最初から正しく入力されていないケースは、現場の体感ではかなり多くあります。誰かが悪いという話ではありません。ただ、依頼した側は望まない連絡を受け、受けた側は届かない連絡に時間を使います。どちらにとっても時間が失われてしまいます。
まずは一括査定サイトの送信完了メールや案内に、キャンセルや連絡停止の方法が書かれていないか確認してください。手続きの方法はサイトによって異なります。すでに連絡をくれた会社には、「今回は見送ります」と一言伝えておくと、会社の側も連絡を止めやすくなります。
名義や住所が合わないと、査定が止まることがあります
連絡先のほかに、名義や住所の入力が合わないことでも、やり取りが止まることがあります。これも現場であった例です。入力項目がきちんと埋まり、売却の理由までそれらしく書かれていて、「物件の名義人(登記上の所有者)です」と申告されている依頼がありました。ただ、住所は丁目までで、番・号の記載がありませんでした。
住所が不足していたため、手がかりになる情報から該当しそうな物件を調べ、その登記(土地や建物の所有者などを国が記録している公的な記録)を確認しました。すると、所有者として依頼者のお名前はありませんでした。
この担当者の会社では、誤った相手に情報を出さないために、依頼者と所有者が一致しないときは、事情を確認できるまで査定を出さない方針をとっています。そこで、住所と所有者の正しいお名前を確認させてほしいと連絡しました。返ってきたのは、これ以上話すつもりはない、という連絡の拒否でした。
名義が異なっても、ご家族からの依頼や相続の途中など、正当な事情があることはあります。だからこそ、まず事情をうかがいます。ただ、確認をお願いした時点で、連絡が終わることもあります。
ここで押さえておきたいのは、一括査定では、入力した情報が、選んだ複数の会社へ同時に渡るということです。申し込む前に、画面に示された提供先と利用目的を確認してください。名義や住所、連絡先が正確でなければ、受け取った会社がそれぞれ確認の連絡をすることになり、そのぶん電話やメールが増えます。正確に入力することは、ご自身の手間を減らすことにつながります。
一括査定から売却まで進む人もいる
ここまで、少し重い話が続きました。ただ、一括査定そのものが悪いわけではありません。売るつもりのある方が、複数の担当者に会って比べる入口として、きちんと機能することもあります。
現場で見ている売却の仲介の範囲では、一括査定をきっかけに売却が成約に至るケースも珍しくありません。
一括査定を使った方のなかには、いちばん高い金額を出した会社をあえて選ばず、担当者の人柄や、価格の根拠の説明を見て、1社だけに任せる「専任媒介契約」を結ぶ方がいます。こうした方は、売り出し価格の相談も、売れなかったときの見直しも話が早く、売却がスムーズに進みます。
媒介契約には「専任」のほかにもいくつか種類があり、ほかの会社にも同時に依頼できるかどうかや、売主への活動報告の決まりが違います。違いは媒介契約の種類と選び方で解説しています。
使う前に決めておきたいことと、数字が並んだら見るところ
使うのは「売ることを考えているとき」
一括査定は、売ることを考えているときに使うものだと考えてください。数社の担当者と会い、話を聞き、比べる。そのための仕組みです。
相場だけ知りたいときは、気になる会社のウェブサイトにある無料査定フォームから、「まだ売るかは決めていない」と前置きして頼むほうが向いています。会社の側も状況に合わせた対応ができ、ご自身が受ける電話の数も少なくて済みます。
入力する前に
- 売る時期のめどがあるか — 「いつか」ではなく、おおよその時期を自分の中で決めておく
- 連絡を受けられる時間帯と方法 — 電話が難しいならメール希望と書いておく
- 名義人・住所・連絡先を正確に入力できるか — 登記上の名義、番・号までの住所、つながる連絡先を手元で確認してから入力する
数字が並んだら見るもの
査定額が届いたら、金額の大小より先に、次のことを担当者に聞いてみてください。
- その金額の根拠になる、近い成約事例を見せてくれるか — 立地や広さ、築年数が近い物件が、実際にいくらで成約したか
- その価格で一定期間売れなかったとき、どう動くかを事前に話してくれるか — 見直しの時期や考え方を、売り出す前に聞けるか
- 高い数字を出した理由を、担当者が自分の言葉で説明できるか — 「このエリアは人気なので」だけで終わらないか
- 売ったあとの話(税金・引き渡し・住み替え)まで視野に入れているか — 売却価格だけでなく、手元にいくら残り、次の住まいにどうつながるかまで話せるか
この4つに具体的に答えてくれる担当者なら、提示された金額がいちばん高くなくても、話を聞く価値があります。会社の選び方は信頼できる不動産会社の選び方、査定の方法そのものは不動産査定の方法と違いで詳しく解説しています。
まとめ
一括査定で並んだ数字は、売れる価格の保証ではありません。とくに仲介査定は「この価格帯で売れる可能性がある」という見立てで、1社だけ飛び抜けて高い数字があっても、それだけで売れる価格が上がるわけではありません。
選ぶ基準は、いちばん高い数字ではなく、その数字の根拠と、売れなかったとき・売ったあとのことまで話せる担当者かどうかです。そして、一括査定は売ることを考えているときに使う。この使い分けが、ご自身の時間と、資金計画を守ることにつながります。
電話の数や、並んだ数字に振り回されず、売ることを落ち着いて考えたい。そんな方の選び方の一つとして、HomeLinQでの査定をご案内します。
不動産の査定で迷っている方へ
HomeLinQでの査定は、入力した情報が複数の会社へ同時に渡る仕組みではありません。
査定を依頼しても、会社側に1件ごとの費用が乗る仕組みでもありません。業務提携した不動産会社の担当者が対応します。
売ることを考えはじめたときに、ご利用ください。